探偵は探偵でも

いろんな職業があるものです。といっても、小説の中でのことですけど。実際にこんな仕事があるのかどうかはわかりません。だって、食べ物の探偵なんです。お客様から「以前食べたこんな味の○○を探してほしい」と依頼されるんです。そして、その味を探し出して再現し、食べさせてあげるんです。小説では、依頼主はみんなそれぞれに思い出や想いがあって、そこにやってくるんです。依頼されるものは、お味噌汁やおにぎりなんていうこともあるから、なんだっていいみたいなんです。それを読んでいて考えたのは、私にはもう一度出会いたい味ってあるかなってことです。でも、物語のように、どうしても忘れられない出来事にちなんだ物や心の中にずっと沁みついているような物は思い当たりません。強いていえば、幼い頃に母が作ってくれていたプリンかな。時々、それに近い味のプリンに出会ったときに、思い出して懐かしいなって思います。そうそう、比較的最近だけど、上司にもらった『おにぎり』がありました。「まぁ、一度食べてごらん」と言われて渡されたんです。具が何も入ってない塩味だけのおにぎりだったんだけど、口に入れた瞬間にその素晴らしさに驚いたんです。本当に衝撃的とも言えるほどの美味しさで、ごはんの粒も普通の倍くらいもあるんじゃないかというくらい大きさでした。そして、冷めてるのにふんわりとした食感だったんです。ある地方のお米で、かなり高級なものとのことでした。それ以上、詳しく聞いてないから、はっきりとした情報はありません。けど、その『おにぎり』にはもう一度出会ってみたいです。

人はないものねだり

仕事が忙しくてなかなか休めなければ当然休みたいと思います。でも、逆に、暇で暇で仕方なければ忙しくなりたいと思いますよね。悲しいことが続くと、何か楽しいことはないものかと思うし、毎日平和に過ごしていると、何か刺激はないのかと思うものなのです。本当に人はないものねだりです。本だってそうです。ストレスが溜まっていると、癒し系の物語や写真集に惹かれたり、声を出して笑える小説や涙を流せる小説を読みたくなります。そして、毎日が問題なく過ぎていると、衝撃的な物語を読んでみたくなるものなんですよね。
先日、ある作家さんのことが書いてあったんだけど、その人は『ホラー大賞』を受賞してデビューした人です。その筆力がすごいって大絶賛でした。続く新作も今までにない手法で、度肝を抜くストーリー展開なんだそうです。ここまで高評価されていれば、興味が湧きます。普段はホラーなんてまず読まない私でも気になりますもの。読んでみたいって思います。けど、こんな風に思うってことは、かなり平和な気分で毎日を過ごしている証拠なんだと思うんですよね。でなければ、そんな刺激を求めないと思います。自分の身に衝撃的なことが起こってほしいなんてこれっぽっちも思いません。でも、毎日が同じことの繰り返しで、なおかつ変化のない日々を繰り返していると、やっぱりちょっと刺激がほしくなるものです。そんな時には、やっぱり小説が一番です。想像の世界での衝撃だから何と言っても安心ですもの。

「そこまで言わなくても」という時

先日、知人に久しぶりにあったんだけど、彼女がかなり落ち込んでいて、初めはどうしたものかと私まで悩んでしまうほどでした。彼女は今、転職活動中で、どうも前日に受けた会社の面接が上手くいかなかったみたいです。どんな話だったのかは、軽く聞いてみたけけど話さないから、それ以上は聞きませんでした。でも、そうとう心が折れてる様子。そこまで落ち込むようなことを言われたのか……。でも、世の中には、人格まで否定するようなことを言う人もいます。私も今までに経験があります。そんなときって、「そりゃ、私がいけないのかもしれないけど、そんな言い方しなくても」って反発してしまいます。けど、本当に自分のことが嫌になってしまう人だっていると思うんです。
ずいぶん前だけど、ある小説にもそんな場面がありました。その小説では、主人公が会社の上司からこれでもかというくらい酷い事を言われるんです。それに耐えながら、でも、心の中では恨んでいたんです。けれども、後でわかったことは、それは上司なりの考えがあってのことだったんです。だとしても、後で上司の気持ちがわかってからなら頷ける部分もあるけど、そのときには「そんなのわからない」というのが正直な気持ちですよね。
さて、知人の場合は面接ですから、ちょっとまた違うのかもしれません。結局、美味しいものを食べて、全く関係ないおしゃべりをしているうちに、少しは気持ちも晴れたようでした。女子にはやっぱりおしゃべりが一番効くみたいです。