おとといからまとまった休みが取れたので、積み上がった「読みたい小説集」をここぞとばかりに一気読みしていました。そうしたら、色んな物語世界を旅したせいか、地に足がついていないようなフワフワした感覚に襲われてしまいました。気分転換に外を散歩しに行ければいいのですが、あいにくの暴風雨で、外に出れば傘は吹き飛んでびしょ濡れになること間違いなし。テレビも映画も見る気がしない。さてどうしよう……
そこで私は、遺伝子工学についての新書を読んでみることにしました。現実的な科学の本を読めば、フワフワ感覚を中和できるかと思ったからです。ある学芸賞を取ったベストセラー科学新書。読みはじめると、困ったことに気がつきました。文章が物語調になっているのです。どうやら、普通に遺伝子工学の話をしたら堅苦しくて一般読者を惹きつけられないだろうと考えた筆者さんが、自身の半生記を小説テイストにして披露してくれているようです。私は、「何年に誰によって、何が、こういう画期的な視点によって発見された。しかし新たにこういう謎に直面した云々」と堅苦しく説明してくれることを期待していたのですが。
それでも、やはり科学新書です。肝心の遺伝子工学の発達史の部分は、専門用語を使って理論的に解説してくれていました。詳しい解説は巻末に回してくれる親切設計。なるほど、さすがベストセラー、これほど親しみやすく、しかも知的好奇心を刺激してくれるとは。こういう本がもっとたくさんあったならば、私の関心も文学に偏らずに済んだのに、と、思いました。